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美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

ジャニーズ事務所を中心に、美しい人たちを愛でて現場や映画やTVの感想を綴っています。

川上未映子「僕たちは、抱きあったことさえ」~松本潤

2014年1月1日朝日新聞広告特集より。

 「気鋭の作家たちが描く『もう一人の嵐たち』

嵐のようで嵐ではない5人を主人公に、

作家がそのイマジネーションを自由に働かせてつむぎだした

五つのストーリー。」

 

これらの素敵な写真たちは、彼らをモデルにした小説と共に掲載されました。

朝日新聞と嵐(2013年12月31日~2014年1月1日) - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

 

5つの短編についてそれぞれ綴るレビューです。

平野啓一郎「フェニックスのリア王」~櫻井翔 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

伊坂幸太郎「Eの874」~二宮和也 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

阿部和重「追跡者」~大野智 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

山崎ナオコーラ「僕は駿馬」~相葉雅紀 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

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川上未映子「僕たちは、抱きあったことさえ」~松本潤

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 (あらすじ)

美容師の「僕」は、毎月末の水曜日が近づくといつも落ち着かなかった。

別れた恋人が月に一度、髪を切りに来るのだ。

僕たちは2年前にこの美容院で出会った。

癖のないまっすぐな髪をしていて、珍しいほど頭の形がきれいな女性だった。

僕たちはどこにでもいる恋人たちのように、

ひかれ合って、愛し合って、すれ違って、口論をして別れた。

別れて1ヶ月が経った頃、彼女はごく当然のように髪を切りに来た。

引き続き彼女の髪を切るようになり、一年が経つ。

これといった会話はしない。質問があるときは敬語になった。

髪を切り終わるとき、鏡越しにいつも少しだけ彼女と目が合う。

そのどうしようもない距離に打ちのめされる。

僕たちは、抱きあったことさえあったのに。

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 個人的にはこの作品が一番好きです。

 

他の作家さんの作品との違いは、

他の作品は、総じてそれぞれのメンバーの内面に触れて、

「もし嵐でなかったら」な彼らを描いておられて、

この作品にも、もちろんそういう面はあるのだけど、

 

川上さんは、

「『もし嵐でなかったら』の松本さんがどんな青年なのか」

よりも、

「『嵐ではない』松本さんをどう描いたら一番美しいか」

に、焦点を当てて、この作品を生み出してくださったように思う。

 

冷静に読めば、

元彼の美容院に月イチで通い、毛先だけを整えてもらう女性も、

元彼女の髪を整えながら「僕たちは抱きあったことさえ」と思う男性も、

ふつうにきもちがわるいぞ。

 

でも松本さんがその舞台に入り、ひとたびそれは美しい世界になった。

繊細で、優しくて、曖昧で、いやらしくて、でも美しい。

現実感がなくて、スクリーンで見守っているのがちょうどいいような世界。

 

何度も読み返しては、その映像を想像してしまう。

そんな作品です。

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