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美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

ジャニーズ事務所を中心に、美しい人たちを愛でて現場や映画やTVの感想を綴っています。

山崎ナオコーラ「僕は駿馬」~相葉雅紀

2014年1月1日朝日新聞広告特集より。

 「気鋭の作家たちが描く『もう一人の嵐たち』

嵐のようで嵐ではない5人を主人公に、

作家がそのイマジネーションを自由に働かせてつむぎだした

五つのストーリー。」

 

これらの素敵な写真たちは、彼らをモデルにした小説と共に掲載されました。

朝日新聞と嵐(2013年12月31日~2014年1月1日) - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

 

5つの短編についてそれぞれ綴るレビューです。

 川上未映子「僕たちは、抱きあったことさえ」~松本潤 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

平野啓一郎「フェニックスのリア王」~櫻井翔 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

阿部和重「追跡者」~大野智 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

伊坂幸太郎「Eの874」~二宮和也 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

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山崎ナオコーラ「僕は駿馬」~相葉雅紀

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(あらすじ)

会社員の宇田川は、同期であり友人の江藤と乗馬を始めることにした。

三十代に突入した記念に「大人っぽい趣味」を始めたかったのだ。

 

動物が好きで、

「日本で触れ合えそうな大型動物なんて馬くらいかな。」

と、夢想していたり、

子供だった頃、今は亡き祖父は乗馬を趣味にしていたし、

宇田川にとって、「大人=馬」と考えることは不自然なことではなかった。

 

「『自分と仲良しの馬が、この世界のどこかにいる』

って考えたら、仕事のやる気が出そうじゃない?」

と、純粋に語る宇田川のことを、

江藤は「計算で可愛いらしさを出そうとする三十歳」と、茶化した。

 

その夜、宇田川は夢の中で馬になっていた。

穏やかに風が吹く、海原のような草原にいた。

走り出す体勢に入ろうとしたところ、亡き祖父が微笑んでいた。

祖父は、

「駿(しゅん)」と、宇田川の名を呼び、腹をさすってくれた。

夢中で話しかけたが、口からは言葉ではなく、馬の呻き声が漏れた。

 

祖父を背中に乗せ、宇田川は走り出した。

首筋のたてがみをなびかせて、全身の筋肉をうねらせた。

心地良かった。

いくら走ってもどこにもたどり着かない。目的地はないらしい。

 

「駿の名前は『駿馬』の駿だ」

「せっかくだけど、名前負けしちゃってるんだ。

僕は、仕事が遅くていつも皆の足を引っ張っていて・・・」

「駿が昔から皆に愛されていること、おじいちゃんは知っているよ。

本当の速さって何か知っているかい?」

「本当の速さ?」

宇田川は目を覚ました。

 

出社の準備をしながら、今日の仕事の段取りを頭に浮かべた。

苦手なことばかりで、今日もしっかり者の江藤の足を引っ張るかもしれない。

通勤電車の中で祖父のことを思い出す。

それから、まだ会ったことのない、これから会う予定の馬のことも想像する。

宇田川は、仕事のやる気がどんどん出てきた。

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相葉さんにとって、大切な二つのキーワード「動物」「おじいちゃん」

で構成されているファンタジックな物語。

 

相葉さん自身は読後の座談会にて、作中に登場する「本当の速さ」について、

「人と比べるものじゃなくて、自分のペースでやればいいというメッセージ」

だと答えておられました。

 

私がこの作品を読んで感じた、「本当の速さ」とは、

「本当に必要な速さ」のことで、

それは、何かを効率よく済ませることだったり、

他者との和を乱さないためのものでもなくて、

 

「その人にとって本当に必要であるもの/場所/気持ち」に対して、

いち早く察知することができたり、

そこへ俊敏に移動することのできる、行動力とか、勇気とか、

そういうものなのかなあ、と感じました。

 

それなら、「駿くん」も、相葉さんも、既に持っているものだね。

 

相葉さんらしい、優しさと大らかさにあふれた、素敵な作品でした。

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