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美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

ジャニーズ事務所を中心に、美しい人たちを愛でて現場や映画やTVの感想を綴っています。

伊坂幸太郎「Eの874」~二宮和也

2014年1月1日朝日新聞広告特集より。

 「気鋭の作家たちが描く『もう一人の嵐たち』

嵐のようで嵐ではない5人を主人公に、

作家がそのイマジネーションを自由に働かせてつむぎだした

五つのストーリー。」

 

これらの素敵な写真たちは、彼らをモデルにした小説と共に掲載されました。

朝日新聞と嵐(2013年12月31日~2014年1月1日) - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

 

5つの短編についてそれぞれ綴るレビューです。

 川上未映子「僕たちは、抱きあったことさえ」~松本潤 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

山崎ナオコーラ「僕は駿馬」~相葉雅紀 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

平野啓一郎「フェニックスのリア王」~櫻井翔 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

阿部和重「追跡者」~大野智 - 美しいものに癒されるから、大切な時間は記録に残す。

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 伊坂幸太郎「Eの874」~二宮和也

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(あらすじ)

「風が吹けば桶屋が儲かる。そういう話が好きなんですよ。」

と、話してくる後輩社員に僕は、

「風が強くなったら、桶屋業界の株を買えばいいんじゃないのかな。」

と、皮肉めいた相槌を打った。

 

彼女は気にせず、

「テレビで、雨が降ったおかげで、生き別れた親子が再会した、という話をやっていたんです。」

と、続けた。

 

「風が吹けば桶屋が儲かって、雨が降れば親子が再会を果たすわけだ。

嵐が来たらどうなっちゃうんだ、いったい。」

そんな風に返す僕に、彼女は、

「子供の頃からそんな感じだったんですか」と、訊ねてきた。

 

優秀だが冷淡。

仕事を安心して任せられるが、笑わない。

何を考えているのか分からない。

周りは僕をそう評価している。

 

「子供の頃は違った。」

僕は野球選手になりたかった子供の頃のことを思い出していた。

スターばかりの強豪チームを、

弱いチームにいる自分の一打でひとあわ吹かせる場面を想像し、興奮していた。

 

今は違う。逆の立場だ。

僕はいくつもの商談を成立させてきたが、

それは同業他社とは比較にならない潤沢な予算や、

会社の規模を武器にするやり方がほとんどだった。

「物量作戦」だ。

 

雨の滴が手の甲に落ちた。

それはみるみる強い雨となり、突然の激しい嵐となった。

 

なかなか前進できなくなったが、烈風が弱まった瞬間を狙い、

僕は一心不乱に駅に向かって走った。

「E番線の874号車に乗りますから。」

後輩社員の声が後ろから聞こえた。

 

ホームに飛び込み、呼吸を整えていると、

後輩社員がじっとある方向を見つめている。

視線の先には、身体を寄せ合っている男たちがいた。

「まさか会えるだなんて」

 

彼女は「もしかするとこれは、雨が降ったおかげで」

とでも言いたげな表情を僕に向け、僕は億劫さを覚えた。

 

すると、ホームのあちらこちらで何十組にも及ぶ、再会を喜ぶ人たちがいた。

 

僕はうろたえ、気持ちを落ち着かせるために広告用のディスプレイに目をやる。

ディスプレイに立つ男が僕に似ていた。

似ているはずだ、僕の顔が反射している。

しかし、その「僕」が忽然と野球少年に姿を変えて、

僕に向かって「物量作戦」と、くすくす笑った。

さすがの僕も笑い方を思いだした。

 

後ろから後輩の、

「どこの株を買えばいいんでしょうか」

いう声が聞こえてきた。

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「世にも奇妙な物語」チックな不思議もの。

走ってる間にパラレルワールドに入っちゃって、

列車に乗ったとたんに元の世界に戻った、みたいな感じかしら。

 

二宮さんの気質と魅力をそのままキャラクターにしてくださった感じで、

憂い気に、皮肉っぽく笑うスーツ姿が鮮やかに脳裏に浮かんで、

読みながら、そのまま脳内で映像化して、どきどきしていました。

 

でも、ファンなら知っている、

本当は熱い部分も持っていて、好きなことへはすごくピュアである部分も

きちんと表現されていて嬉しかった。

 

同業他社とは比較にならない規模と予算を持つ会社って、

まるでジャ○ーズ事務所のことみたい(笑)

 

二宮さんは物量作戦だけで勝ち続けている人ではないよ。

一打でひとあわ吹かせる実力も、ちゃんと持っている人です。

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